サービス・ブランディング
サービスにおけるブランディングとは、何を目的にどのようなことを行えば、サービス・ブランディングをしたといえるのか、についてサービスという商品の特性を踏まえながらご紹介いたします。
サービス・プロダクトの課題
消費者へ提供するために、個人や組織が開発したものを「プロダクト」または、単に「製品」といいます。
これにならって、サービスの提供者や組織が、独自に新しく作ったサービスは「サービス・プロダクト」と呼ばれています。
スマートフォンなどの目でみて捉えることができるツールは、その仕様が明確で、事前に調べることで良し悪しを検討できます。このようなプロダクトを、「探索財」といいます。
一方で、サービス・プロダクトの多くは、実際に体験してみないと、そのサービスの質や、消費者自身のニーズに適したものかを判断できません。このようなプロダクトを「経験財」といいます。
この体験という形のないところに消費者が求めるニーズがある性質を、サービス・マーケティングでは「無形性」と呼びますが、体験しないとわからないという問題によって、消費者のマインドに、そのサービスが何であるかといった識別性の課題や、他のサービスとの差別化を難しくさせる課題が生じます。
これらの課題に対しては、事前に認識できない無形の価値を、認識できる別の要素を使って表現することが重要になります。
課題を解決しつつ、消費者のニーズに適した価値あるサービスかを判断しやすくする目的で、サービス・ブランディングは行われます。
ブランド要素とは
具体的に、どのようなを要素を使って、サービスの価値を表現していくのかについて、ご紹介いたします。
消費者のマインドに、ブランドについての認識を明確にするため、視認できる要素を最大限に利用することが、重要になります。
ここでは、サービス・ブランディングでよく活用されるブランド要素「サービス名」「ロゴやシンボル」「スローガン」「パッケージング」について解説していきます。

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サービス名
消費者がニーズを解消したいと思った時、そのニーズに対応できるサービスが、消費者のマインドに連想されることが大切になります。
つまり、マインド内にそのサービスについての認識がある程度備わっていることが、ブランドの確立となります。この意味で、もっとも役に立つ要素にサービス名が挙げられます。
ブランドを認識することができ、そのブランドのことを思い出すことができることを「ブランド要素の記憶可能性」といいます。サービス名を記憶していれば、インターネット検索の際に、サービス提供者が用意したWebサイトやSNSにつながり、より多くの情報を獲得したり、利用申込みに至ることができます。
このことをサービスの命名に活かそうとすると、次のポイントがみえてきます。
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思い出しやすい名前
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検索しやすい名前
消費者のニーズに関連する言葉が含まれていると、ニーズに関連したサービスの思い出しやすさにつながることが考えられます。
また、検索のしやすさについては、想定する消費者にとってあまり馴染みのない言葉を使うと、当該のサービスを見つけられないどころか、間違ったサービスにつながる可能性が出てきます。
これらのことから、想定する消費者にとって馴染みがあり、ニーズに関連した言葉を使った名前の方が望ましいといえます。
そして、上述の考え方とは別の命名方法もあります。
サービス・プロダクトが消費者にもたらすベネフィットなどの特徴を「人・場所・動物・植物・物」といった象徴とリンクさせる方法です。
SOCIAL BRANDING COACH では、コーチングを行う者を意味する「コーチ」をサービス名にすることで、サービス提供を行う人物という有形要素をイメージしやすくし、実際のサービス体験のコアを表現しています。
ただ、サービス名について注意が必要な点があります。それは、考えたサービス名がすでに使われていないか、確認することです。
特に、すでに商標として登録されている名前で事業をすることは、控えなければなりません。特許庁の情報プラットホームの検索を利用すれば、すぐに確認できるので、活用してみましょう。
●特許庁Webサイト「スタートアップ向け情報>商標を検索してみましょう」
https://www.jpo.go.jp/support/startup/shohyo_search.html
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ロゴやシンボル
ロゴやシンボルは、視覚的なデザインによって、消費者のマインドに映像的な記憶を形成したり、そこから連想されるイメージを伝達するのに役立ちます。
ロゴとは、文字を使ったデザインを指します。フォントやデザインによって、サービス名を表現することで、サービスの名前だけでは補いきれない要素を追加することができます。
次に、シンボル(またはシンボル・マーク)ですが、主に図形とカラー、配色によって、消費者にサービスの雰囲気を表現します。
そして、ロゴとシンボルが組み合わさったものを「ロゴ・マーク」と呼びます。
SOCIAL BRANDING COACH のシンボル『ねじり白梅』は、利用していただく方が、できるだけリラックスして想いを言葉にしていただけるよう「親しみ・安心感・柔らかさ」というイメージ・コンセプトを表現しています。
03
スローガン
スローガンとは、主に提供する側の世界観やモットー、または、消費者や利用者などに向けたメッセージを指し、短い言葉で表現されます。
サービス・ブランディング要素として活用する場合、消費者にとってそのサービスが、どのような意味を持つのかを表現することが目的となります。
ここでもSOCIAL BRANDING COACH を例に挙げると「多様なニーズに、多様なサポートを」が、それにあたります。
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パッケージング
有形物の商品包装などを、マーケティング用語で「パッケージング」といいます。このパッケージングは、お菓子などのプロダクトを保護し、購買の意思決定する際の判断材料を提示したりなど、多様な役割をもたせることができます。
サービス・プロダクトでは、サービス提供を行う施設の外観が、パッケージングにあたるとされています。また、受付や設備、サービス提供者の服装なども含むことがあります。
そして、オンラインでカウンセリングやコーチングサービスを提供する場合、利用申込みをするためのWebサイトは、消費者の個人情報を保護したり、意思決定の判断材料を掲載する点、見た目や仕様のデザインをゼロベースで構築する点で、有形物のパッケージングに近い性質があります。
色味や配色でブランドの世界観を伝えられるブランド・カラーも、このWebサイトに活用することができます。
ブランドは約束
ここまでご紹介してきたブランド要素は、とても基本的な要素ですが、これらをうまく活用することで、サービス・プロダクトの無形性の課題をクリアにし、同時に、消費者のマインドに唯一無二のブランドを構築することができます。
ブランド要素をうまく活用するためには「どのようなご状況の方に、サービスを届けたいのか(セグメント作成)」「そのために、どのような価値をご提供できるのか(サービスの設計)」「どのような存在として関わっていくのか(ブランド・アイデンティティと提供者アイデンティティの確立)」などの観点で、こまやかに考えていくことが大切になります。
また、ブランディングを通して確立されるイメージは、サービス提供側が、実際に提供できるベネフィットを約束するものでもあります。
この意味で、サービス・プロダクトにとってブランディングは、無形の価値に信頼を生み出す仕事といえます。